2017年に読んで面白かった本ベスト5

毎年毎年、やろうかなーと思っては心の片隅でくすぶったまま消えていくこの企画。

年賀状もおせちも作れないのに、ましてやブログの更新などできるわけなかろう!という例年の年末進行でしたが、今年はちょびっと心に余裕ができたのでやってみることにしました。

いつか「この企画やらないと年が終わる気がしないなー」とか言ってみたいもんです。なのでやります。

2017年に読んで面白かった本、なかでも2017年に出版された本に絞って(じゃないと選んでるだけで今年が終わる)、5冊選出してみます。

Vol.1 「美術ってなあに?」スージー・ホッジ

これは娘と読む用に買いましたが、私も唸るところが多い一冊でした。

「目も鼻もない棒みたいな人の絵がなんでアートなの?」「こんなの、僕の妹だってできるってば!」「頭がよくないと、アートのすばらしさはわからないの?」などと、よく鑑賞教育で問われるような疑問でありながら、美術館で大声でこんなこと言っちゃう人がいるようなテーマばかり。

子どものうちから「アートってよくわからない」が染みついてしまうのは悲しいことです。ホントは自分の見てる景色や感情の渦巻きによって、ふっとその心に分け入ってくる作品があるかもしれないのに。

アート…というか、アートによって映し出される心象風景や見たこともない世界を見つめない、あるいはその余裕がないのは大人の方なんですよね。子どもはそれを真似して言っちゃうし。「アートってよくわからない」って。

だからこそ、ぜひ大人にも読んでほしい一冊だなと思います。私も、自分があまり触れてこなかったジャンルの展覧会に行く前にこの本を読んだりして、心と頭を柔らかくするようにしています。

Vol.2 「ミュージアムの女」宇佐江みつこ

美術館には様々なお仕事がありますが、本著では岐阜県美術館の受付や監視員の方々のお仕事にスポットを当てています。

その仕事の特殊性からか、作品保護の観点で美術館の中の世界を語るというのはなかなか新鮮な内容です。虫を捕らえて古封筒に入れて密封し、報告書を書く姿とか、コミカルで面白いのですが、その日々の細やかなお仕事っぷりに頭が下がります。

コラムでも「学芸員になる人」というテーマでは、「実技専攻から学芸員になった人に出会うと、相当な努力をされたのだな…と」というようなことが書いてあって、美術に携わる人を一緒くたにしがちな私たちの考え方をひっくり返してくれます(詳しくはぜひ読んでみてください!)。

地方の公立美術館からこのような面白い本が出たことが本当に嬉しいです(何様)。ミュージアムショップも面白いですし、岐阜県美術館の活動にこれからも注目していきたいですね。

Vol.3 「アルカイダから古文書を守った図書館員」ジョシュア・ハマー

こういうノンフィクションを読むのは割と珍しいです。が、タイトルの衝撃に惹かれ書店で手に取ってしまいました。

西アフリカのマリ共和国にあるトンブクトゥという都市。ここには各家庭でひっそりと、大事に保存され受け継がれてきた大変貴重な古文書がありました。これらは図書館に少しずつ集められてきたのですが、マリ北部を制圧したアルカイダから、いかにこれらを守ることができるのか…!

この内容だけでグッときませんか。「アフリカの古の学術都市」ですよ。もうワンピースの世界かよっていう。

なぜトンブクトゥが古の学術都市になったのか、古文書が図書館に集められるまでの苦闘も描かれているので、これを読むと私たちの知らないアフリカの姿を知ることができます。

もちろん、アルカイダから古文書を守るために奮闘する姿は、映画ではなく本当にこんな世界があったのか…と、自分の無知っぷりにも胸が痛みます。

そして、命を懸けて貴重な古文書を守り抜いた図書館員に心からの敬意を示したくなる。そんな一冊です。

Vol.4 「今日の人生」益田ミリ

益田ミリさんの作品が私は大好きで、これまでの作品の中でも一番好きかもしれない。ミシマ社のウェブマガジン「みんなのミシマガジン」で連載されていた作品です。

「今日の人生」という書き出しで始まる漫画たち。2コマで終わるような短いのもあれば、まるでエッセイを読んでいるようなグサッと深い漫画もあり、めくるめく、何でもない人生のなかで「人生の美しさ」を漏らさず書き取っている一冊です。

そもそもこの「日々の人生の中で、胸がいっぱいになった瞬間を取りこぼさずに描く」というのは益田ミリさんの作品全体に通ずるテーマなのだと思います。

『どんな瞬間も宝物』『当たり前の日常が一番大事』という、口に出した瞬間から腐り始めてしまいそうな、よくあるポップソングで使い古されてしまったようなフレーズも、実はそれは真実なのだということを証明することに、益田ミリさんは命を懸けているのではないでしょうか。その命がけの優しいエッセイに涙が出ます。

Vol.5 「降伏の記録」植本一子

写真家でありながらその素晴らしい文才に毎度胸を打たれる、植本一子さんの最新作。

夫であるECDの癌が発覚してからの日々、子育てに仕事に看病に心と身体をすり減らしながら、まさに魂をも削って書いた渾身のエッセイです。

「かなわない」「家族最後の日」に続き、日記と書き下ろしというスタイルをとっています。なのでこの2作を読んでから今作を読むのがいいかもしれません。

この方は本当に存在自体が写真機のような、「こぼさず隠さず書く」という、私だったらとても勇気が出ないことをやってのける稀有な書き手だと思います。

植本さんの著作を他人の日記を読むように楽しむ、という方法もあるかもしれませんが、少なくとも私は自分の暮らしと重ね合わせて泣きましたし、書くことで必死に生きている方の存在に救われています。

今作の作中にもあるように、全2作は家族やこれまでの植本さんに関する情報が少なくて、彼女の行動に対する批判も寄せられていました。

今回はそれを振り切るように、本当にすべてを書ききっています。何とまぁ、苦しかったことだろう…と涙が出ます。まずはお身体ご自愛ください。幸せになってほしい、と僭越ながら思いました。

最後に

いかがでしたか?自分なりには渾身のセレクトだったかなと思います。まだまだ他にもご紹介したい本はありました。皆さんの「2017年に読んで面白かった本」もぜひ知りたいです。

あと5本!と言われたらこちらかしら…↓

年内にもう一本くらいはブログ更新できるかな?それではまた次回!

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